最近、ニュースなどで「国保逃れ」という言葉を耳にすることが増えましたね。
これは、国民健康保険(国保)の保険料が高くなるのを避けるために、ある特殊な方法を使って、社会保険(社保)に切り替えることを指します。
特に、自営業の方や地方議員の間でこの手法が使われていることが問題視され、大きな話題となっています。
国民健康保険って、そもそも何?
国民健康保険、略して「国保」は、日本に住むすべての人を対象とした公的な医療保険制度の一つです。
会社に勤めている人向けの健康保険とは違い、自営業の人、フリーランス、年金生活者など、会社の健康保険に入っていない人が加入します。
国保は、病気やケガをした時に、医療費の一部を国や自治体が負担してくれる、いわば「お医者さんに行くときのお財布」のようなものです。
この制度は、もともと1930年代に貧しい農村の人たちが医療を受けやすくするために始まりました。
その後、誰もが安心して医療を受けられるようにと広がり、1961年には「国民皆保険」、つまり日本に住む全員が何らかの公的医療保険に入るのが当たり前になりました。
国保の保険料は、加入している人の所得に応じて決まるのが大きな特徴です。
所得が高い人ほど保険料も高くなる「応能負担」という考え方が原則になっています。
社会保険って、どう違うの?
「社会保険」は、会社に勤めている人が加入する健康保険(協会けんぽや組合健保など)と厚生年金を合わせたものの総称です。
国保との一番大きな違いは、保険料の支払い方です。社会保険の場合、保険料は会社と従業員が半分ずつ負担します。
また、社会保険の保険料は、「標準報酬月額」という、給料を一定の幅で区切った額を基に計算されます。
この仕組みのため、特に高所得の人の場合、国保よりも社会保険の方が、自己負担する保険料の額がずっと安くなることがあります。
「国保逃れ」って、どんなワルワザ?
「国保逃れ」とは、この国保と社会保険の保険料負担の違いを利用して、国保の支払いから逃れるための手法です。
具体的には、次のような手順で行われます。
・一般社団法人の「理事」になる
自営業者やフリーランス、地方議員などが、形式的に「一般社団法人」という団体に「理事」として名前を連ねます。
・低い報酬を設定する
この一般社団法人から、月々ごくわずかな報酬(例えば、月に数万円など、本業の収入に比べてはるかに低い額)を受け取るようにします。
・社会保険に加入する
その低い報酬を基に、社会保険(主に協会けんぽなど)に加入します。
・保険料を大幅に削減
社会保険の保険料は、この低い報酬に基づいて計算されるため、本来支払うはずだった国保の保険料と比べて、年間数十万円から百万円以上も安くなることがあるのです。
このようなスキームは、「社会保険料削減スキーム」などとも呼ばれ、インターネット上でも情報が出回っていました。
なぜ「ずるい」と言われるの?
この「国保逃れ」の手法は、法的な形式上は問題ないとされることもありますが、「制度の趣旨を逸脱した」「脱法的」「実質的な悪用」として厳しく批判されています。
主な理由は以下の通りです。
・「応能負担」の原則に反する
国保は、所得に応じた公平な負担を求める「応能負担」が原則ですが、このスキームを使うと、高所得者でも低い保険料しか払わなくなります。
これは、制度の考え方を無視していると指摘されます。
・実態を伴わない形だけの役職
一般社団法人の理事になったとしても、その仕事内容は簡単なアンケート回答程度だったり、ほとんど実態がなかったりするケースが多いとされています。
つまり、社会保険に入るためだけに形だけ理事になっている、ということです。
・他の加入者への負担増
一部の人が保険料を安く抑えることで、その分、国民健康保険制度全体の財政が苦しくなり、結果的に他の真面目に保険料を支払っている人たちの負担が増える可能性があります。
日本維新の会の「国保逃れ」騒動とは?
2025年12月、大阪府議会で、日本維新の会の地方議員がこの「国保逃れ」を行っていたのではないかという疑惑が指摘され、大きなスキャンダルとなりました。
ある一般社団法人の理事に、多数の維新所属議員が名を連ね、低額の報酬で社会保険に加入していたと報じられました。
中には、年間100万円を超える国保料を、このスキームで約30万円に抑え、80万円も節約していた疑いが持たれる議員もいました。
維新の会は、党として「社会保険料の引き下げ」を公約に掲げていたため、自分たちの議員が「国保逃れ」をしていたことに批判が集中しました。
党は全国の所属議員を対象に調査を実施し、最終的に複数の議員が「脱法的行為」に関与していたと認め、処分を検討しています。
この問題は、「身を切る改革」を掲げる政治家の倫理観や、公的な制度の公平性について、私たちに改めて考えさせるきっかけとなっています。